
花を飾るような人になりたいと思った朝がある。
特別なことがあったわけじゃない。起きたら少し肌寒くて、いつものマグカップにコーヒーを注ぎながら、ふと窓の外を見た。そのとき、なぜだか「この部屋に花があったら、きっと今の気持ちも変わるのかな」と思った。
僕はまだ、一度も自分のために花を買ったことがない。花屋の前を通りすぎるとき、きれいだなと思って足を止めることはある。でも、それを家に持ち帰るという行動にはつながらない。なんとなく「自分にはまだ早い」ような、そんな気がしていた。
Instagramで見かける誰かの部屋には、いつもさりげなく花がある。白い小瓶にひと枝のミモザ、光が差し込む朝、静かな余白。そういう世界に、少しだけ憧れている自分がいる。

僕の部屋には、まだその余白がない。片づけが行き届かず、どこか雑然としていて、そこに花を置いても浮いてしまいそうで。そう思っているうちは、たぶん何も変わらない。でも、だからこそ、「花を飾れるような人になりたい」と思った自分の気持ちは、大切にしたい。
飾るのは、チューリップでも、無造作な野の花でもいい。自分のために、ひとつだけ。そういうことを、ちゃんとできる人でありたい。暮らしを美しく整えるというより、まずは心の中に余白をつくるために。
いつか、自然と花を飾るような日が来るだろうか。 それとも、その日を自分で選んでみるべきなんだろうか。