なぜあの形に惹かれたのか、今もまだうまく言葉にできない。

街でふと立ち寄ったショップの片隅。ガラス越しに見えたのは、無垢材でできた小さなスツールだった。
やわらかく丸みを帯びた座面、少し内側に傾いた脚の角度。装飾はないのに、なぜか目が離せなかった。
手に取ってみると、表面は驚くほど滑らかで、指がすっと流れるように動く。硬さはあるのに、冷たさはなかった。
デザインのことは詳しくないけれど、たぶんこれは“考えて作られた形”なんだと思った。見た目だけじゃなく、触った感触、座ったときの空気まで計算されているような。
なぜそんなに惹かれたのか、自分なりに考えてみると、「安心感」だったのかもしれない。
最近、選ぶものが変わってきた。尖ったものより、すこし丸いもの。重厚なものより、空気が通るようなかたち。
そのスツールは結局買わなかった。でも、頭のどこかにずっと残っていて、別の椅子を選ぶとき、自然と似たような形を探していた。
あのデザインに惹かれた理由。それは、形の美しさじゃなくて、たぶん“今の自分にちょうどよかった”からなんだと思う。
形が響くって、たぶんそういうこと。