部屋に何かを「足す」ことは簡単だ。
けれど、「置かない」ことを選ぶのには、少し勇気がいる。
余白のある空間。
それは、決して「何もない」わけではない。

風がすっと通り抜ける場所。
光が静かに差し込む壁際。
音や気配に気づける静けさ。
そういうものを受け止めるために、空間には“すき間”が必要なのかもしれない。
日本には昔から「間(ま)」を大切にする文化がある。

茶室のにじり口、襖一枚を隔てた空間、余白のある掛け軸や床の間。
それらはすべて、**「詰め込まないことで、何かを感じさせる」**空間づくりだった。
音と音のあいだにある「間」。
話と言葉のあいだにある「間」。
その“余韻”を楽しむ感覚は、今も私たちのどこかに残っている。
だからこそ、住まいの中にあえて空間を残すこと。
それは、とても自然なことなんだと思う。
家具を詰め込みすぎると、暮らしの視界も心も、ちょっと窮屈になる。
逆に、何もない壁、何も置かれていない床の一角が、
まるで呼吸をするように空気を和らげてくれる。
大切なのは、「何を置くか」ではなく、
「何を置かずに、残すか」。
空いたスペースに、光が入り、風が通る。
心に余裕ができると、空間にも自然と余白が生まれる。
忙しさに追われる毎日こそ、あえて“何もしない”空間を残す。
そこに身を委ねる時間が、意外なほど、心を整えてくれる。
余白は、空っぽではなく、
感性が自由に動けるスペース。

詰め込みすぎないことで、
住まいは「居場所」になっていく。
そんな空間を、これからの暮らしにも、大切にしていきたい。