この音が鳴ると、僕の中の時間は遅くなる。── ペトロールズと僕のリズム

冒頭の問い

この音が鳴ると、僕の中の時間は遅くなる。

ペトロールズと最初に出会ったのは、洋服屋で働いていた頃、とてもリスペクトしていた店長から教えてもらったのがきっかけだった。

ファッションセンスも、仕事との向き合い方も憧れていたその人が、ふとしたタイミングで口にしたバンド名。

それだけで、なんとなく“ただものじゃない”と感じたのを覚えている。

東京事変のギタリストとしても知られる長岡亮介さん。

浮雲という名前で活動していたその人が、ペトロールズでは自分の本質みたいなものをじわりと音にしている気がした。

ネオソウルやジャズ、カントリーを横断するような浮遊感のあるギター。

ゆっくりと都会の夜が流れていくようなテンポ。

3ピースバンドなのに、スカスカじゃなくて、音の層が厚い。

この音楽に触れていると、焦っていたはずの自分の時間が、ふと“間”を取り戻していくような感覚になる。

特に好きな曲は「Fuel」。

車好きの長岡さんが、ペトロール(ガソリン)から着想を得て名づけたこのバンドの中でも、

この曲は、人間の原動力ってなんだろうと考えさせてくれるような一曲だ。

ドライブに合う──というより、

何かを走らせるのではなく、ふとアクセルを緩めるタイミングに寄り添ってくれる音楽。

僕は普段、ファッションや暮らしの中でも、

少し背伸びをしていたり、どこかで偉ぶっていたりすることがある。

でも、ペトロールズを聴くと、なんだかバカらしくなって、力が抜ける。

それは僕にとって、ちょっとしたアンガーマネジメントみたいなものかもしれない。

“ゆるくていいじゃない”

このスタンスで活動し続けている姿勢に、僕は誠実さを感じている。

締めの問い:

僕が聴いていたのは、音じゃなくて、その“間”に流れていた空気だったのかもしれない。